調査と研究

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マラソン中の突然死

●100km走前後の血液データ (サプリメント効果)No.1

私は2003年日本各地の100kmウルトラマラソン大会を5回走りました。各大会の2日前と大会翌日の2回血液検査を行いました。なお、採血時間はほぼ同じ時間帯で行いました(2日前は12時、翌日は15時前後)。マラソン完走時間は表1の通りです。4月の「奥熊野」と5月の「飛騨」の大会ではサプリメントは何も服用していません。5月の「にちなんおろち」と10月の「四万十川」では「ヴァームを2袋、アミノバイタルを3袋」をレース前とレース中の間に服用しました。9月の「村岡」では「アミノバイタルプロを5袋」同じようにして服用しました。

CPKは「骨格筋、心筋、平滑筋、脳などに分布する酵素」です。医学的には「急性心筋梗塞」の時に急上昇し、臨床診断にその検査値が有用とされています。運動により上昇することも知られており、骨格筋の障害(ダメージ)を表す指標にもなります。

今回の血液検査で大会前のCPK値は97〜145と軽度のバラツキはありますが、正常範囲の40〜200の範囲内にあります。100km走1日後のデータでは489〜1319と上昇がみられます。この中でサプリメント服用後の3大会のうち9月の「村岡」ではサプリメント未服用の2大会と大きな変動はありませんでした。しかしながら、6月の「にちなんおろち」と10月の「四万十川ではCPK値が半減しています。よってこの時同じように服用したサプリメント「ヴァーム2袋とアミノバイタル3袋」は明らかにマラソンによる骨格筋のダメージを軽減する効果があると判断しました。

しかし9月の「村岡」においてサプリメント(アミノバイタルプロ5袋)は全く無効であったかというとそうではありません。自覚症状の上で全身の疲労感、筋肉痛、嘔気や食欲不振の胃腸症状は何も服用しなかった2大会に比べてはるかに軽減されていました。自覚症状を表2にまとめました。

今回のサプリメント服用の有無については全身疲労感、筋肉痛以外にも自覚的には胃腸症状の軽減効果がありました。これにはサプリメントに含まれる成分の中に肝臓機能改善効果があるといわれるアルギニン等によるものかは不明ですが、ウルトラランナーによくみられる長距離走中の胃腸症状(嘔気、食欲不振等)に効果があるかもしれません。

表1 100km走の完走時間

大会名 奥熊野 飛騨 にちなんおろち 村岡 四万十川
完走時間 12時間57分 13時間37分 13時間47分 13時間51分 13時間32分

完走時間は12時間57分から13時間51分の間であります。各大会同じような走りで、後半はどの大会も歩いた時間があります。各大会とも大体山の中を走るコースが主体で、高低差が一番少なかったのは「四万十川」で、一番強かったのは「村岡」でした。

表2 100km走後の自覚症状

大会名 奥熊野 飛騨 にちなんおろち 村岡 四万十川
サプリメント なし なし アミノバイタル3袋
+ヴァーム2袋
アミノバイタルプロ
5袋
アミノバイタルプロ3袋
+ヴァーム2袋
全身疲労感 +++ +++
筋肉痛 ++〜+++ ++〜+++ +〜++
胃腸症状 ++〜+++ +++ ± ± ±

 

【参照】スポーツに活用されるアミノ酸(東京大学院 大谷勝)

@全身疲労感とアミノ酸

アミノバイタルにはロイシン、イソロイシン、バリンという3種のアミノ酸が含まれている。これらは分子構造の特性から分子鎖アミノ酸(BCAA)と総称される。BCAAには血中乳酸値を抑える機能がある。乳酸は筋肉疲労物質であり、ブドウ糖が分解され、エネルギーになる時に発生する。ところがBCAAを中心としたアミノ酸を摂取すると、負荷の大きい運動をしても血中乳酸値は上昇しにくくなることが確認されている。

一方、負荷の大きい運動を長時間続けると、血液中のBCAAが低下し、アミノ酸のひとつ「トリピトファン」が上昇する。トリプトファンは通常アルブミンと結合した形で存在し、脳内でアルブミンと遊離して中枢性疲労の原因物質である「セロトニン」を生じる。実際に負荷の大きい運動の場合脳内のセロトニン量は増加しており、BCAAを十分摂取することで脳内のトリプトファン濃度を高めないようにすると、中枢性疲労の軽減や疲労の回復に効果があると報告されている。

A筋肉痛、筋肉疲労予防効果

筋肉を構成している筋繊維は、筋細繊維という微細組織の集合体である。筋細組織はアクチンとミオシンというたんぱく質からできている。このアクチンとミオシンの主成分はロイシン、イソロイシン、バリンという分子鎖アミノ酸(BCAA)である。BCAAは筋蛋白に含まれる必須アミノ酸の35%を占めている。そこでBCAAを補給すれば筋細組織の素材となり、筋力アップに効果をもたらすことになる。

また、BCAAのひとつであるロイシンは筋たんぱく質の分解抑制と合成促進の双方の働きがあり、筋力アップに重要となる。適度な負荷のトレーニングの場合、筋肉中のたんぱく合成は促進されるが、激しい筋力トレーニングや長時間走などを行うと、筋組織のたんぱく質を分解し、BCAAをエネルギー源として使うようになる。つまり負荷の大きい運動により筋組織は破壊されるのである。ところがBCAAを補給すると、筋肉の損傷や筋力の低下が予防できる。補給された余分なBCAAは運動エネルギーに利用できる。すなわちエネルギー源の余剰ができ、スタミナを長時間維持することが可能となる。さらに運動直後にBCAAを補給すれば、筋肉の損傷をすばやく回復し、筋肉痛や気肉疲労を防ぐことが可能になる。

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