マラソン中の突然死
●AED(自動式除細動器)の重要性について
マラソン中の突然死の場合「心臓突然死」が大多数である。この心臓突然死の中でも不整脈死によるものがかなり多数を占めると考えられている。この死に至る危険な不整脈の中の代表的なものが「心室細動」である。この心室細動には器質的心疾患がある場合とない場合がある。ある場合としては急性心筋梗塞、心筋症などである。この器質的心疾患の有無にかかわらず心室細動という不整脈の状態に陥ると、心臓はブルブル震えているだけで拍動しなくなっている。その状態は心臓が停止している状態に近いものである。よってそのまま放置しておくとやがて完全な心停止状態となり、死にいたる。
しかしこの心室細動という不整脈を一瞬にして元の心拍動に戻すことができる機械がAEDである。AEDとは「Automatic external defibrillator」・・・自動式除細動器のことである。以前は心室細動という不整脈は医師が心電図にて診断し、除細動器を使用して治療を行ってきた。日本では2004年7月からAEDの機械を使って一般市民が救急処置することが認められた。アメリカでは数年前から市街地の各地にAEDが設置され、市民自らの手で直流除細動を行う試みがなされている(PAD)。アメリカのロチェスター市では、警察官にPADを試行させたところ目撃者のいた心原性の心室細動の生存退院率が26%から58%に改善したという。
【早期除細動の重要性】
@目撃者のいる突然の心停止を調査すると、最初に認められる心電図波形は心室細動である。
A心室細動の最も有効な治療法は除細動である。
B除細動は数分以内に行わなければその効果は激減する。
C心室細動は数分以内に収縮停止に陥る。
D心室細動に陥った患者に一次救命処置がなされ、6〜10分かかっても除細動が行えれば多くの患者は神経障害を残すことなく生存できる。
(エビデンス)
心室細動発生1分後の除細動では蘇生率は80〜90%であるが、1分遅れる毎に蘇生率は7〜10%減少する。5分後で50%、7分後で30%、9分後で10%、12分後で2〜5%になってしまう。
(参照) 白戸 隆洋 市民が行う電気的除細動 総合臨床 2001年4月号
ということで、心肺停止状態を発見した人が救急車を呼んでも15分前後の時間を要する。この時間内に除細動できるかどうかが救命する上で非常に重要なこととなる。救急車に乗ってきた救命士が適切に判断して除細動を行っても手遅れになる可能性がある。心肺停止状態から蘇生率を上昇させるためには、1人でも多く救命するためには市民による蘇生術が行えるかどうか、AEDを使用して除細動が行えるかによると言っても過言ではない。
【除細動器の使用方法】
@倒れている人(患者さん)の状態を確認する・・・意識がない、呼吸をしていない、脈が触れない・・・心肺停止状態と判断する
AAEDのフタを開ける(日本光電製であればそれだけでオンの状態となる)
B2枚の電極を貼り付ける・・・右上胸部と心臓の左下部、どちらの電極でもOK
C音声ガイドに従って行動する
『患者に触れないでください、心電図の解析中です。』
『除細動適応です。充電中です。』
『放電します。患者から離れて点滅ボタンを押してください。』
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これまでの行動は3つです。
@心肺停止状態かどうか確認すること、AAEDのフタを開け電極を2枚貼ること、B音声ガイドに従い点滅ボタンを押して患者さんに電気ショックをかけること
この作業は特別な訓練を要しません。小学生でも可能です。しかし一刻を争う救急時に行うものですから、日ごろから蘇生術の講習を受けた人が取り扱うことが望ましいと思います。一度AEDの使用方法を直接学んだ人は自信を持ってその機械を使いこなすことができると思います。
【注意点】
@電気ショックは1回で救命できないことがあります。その時は心電図解析→充電→除細動 と2回目、3回目の電気ショックを与えます。最初の200ジュールから300ジュール、360ジュールとと出力が上がっていきます。
A8歳未満の子供には使用しないこと
B除細動が成功しても電極はそのまま貼り付けておくこと(AEDは通電後も心電図を持続的にチェックし、次に行うべき処置を自動的に指示してくれる)
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